形而上的空想世界



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鮮やかな殺人
おばんでございます。
凛として時雨の鮮やかな殺人を題材に暇つぶしに書いてみました。
一晩考えて勢いで書いただけなので校正等しておりません。が、よければ読んでみてください




鮮やかな殺人
 アパートの前を通るトラックのけたたましいクラクションの音で目が覚めた。一体何時だろうか?昨日は確か酔いつぶれるままに寝たきはするのだが、テーブルは綺麗に片付けられている。彼女がいつの間にか来て片付けてくれたのだろうか。しかし僕と話さずに帰っていくとは・・・まあこうしてしてくれるだけありがたいことだろう。
 男は立ち上がり冷蔵庫へと手をかけた。なくなった酒がちゃんと補充されてたし、冷食ではあるが食べ物があった。適当に炒飯を選び出しレンジに入れた。待っている間にウイスキーを一口。ノルモレストを・・・いいやこいつは飯を食ったらにしておこう。
 チーンというレンジの耳障りのいい音。温かい飯。最近の冷食はうまいのだなと思い知らされる。
 彼女の料理にはかなわないなあとかぼやきながら満足した所でまたウイスキーを口に含んだ。さらにノルモレストを4錠がりがりと噛み砕きウイスキーで流し込んだ。彼女はいつ来るのだろうか。そういえばやかましくなっていた電話が鳴らなくなったなどと考えながら効いてくるのを待った。今日はカレンダーによれば12/30。もう年の瀬だな、年越し正月をどう過ごそうか、来年はどうしようか、何か大切なことがあった気がすると思いを馳せていたところでカレンダーの日付がぐにゃりと歪んできた。
 圧倒的な快楽。こうしてまどろんで酒を飲んでいれば人は何も考えずに平和に暮らせるのだ。ましてやただの睡眠薬だからヤクのように中毒になることもない(ないはず、実際にはやめられてはいないが)。
 身体が溶け出しているかのようだった。五感が混ざり合って周囲のものと同化しているかのようだった。
 長い坂道の果てに学校が見える。坂道の途中に神社が見える。これは小学校の時だっけ。黒や赤などの色をしたランドセルを背負った小学生がたくさん歩いている。一人適当に後ろからナイフを刺した。若さだからだろうか、勢い良く飛び出る鮮血。返り血を浴びることなど気にはしない。この子の顔は見覚えがある気がする。
 また長い坂道。今度は少し急な斜面だ。これは中学校の時だっけ。僕は車にキーをさし乗り込んだ。大好きな赤色の車。中学校の駐車場に車を止め、後部座席から銃を取り出す。替えの弾をポケットにありったけ詰め込む。ドアを開けて歩き出すと、ジャラジャラと小気味よく弾が触れ合って音をたてた。僕を不審者だと思ったのだろうか?何か言いながら寄ってくる職員の頭にすかさず弾を撃ち込む。鈍いやつだ。懐かしい入り口、階段、廊下を通り教室の扉を開ける。授業をしていて、急に入ってきた男に驚いている教師の額に一発。たちどころに上がる生徒の悲鳴。教室の後ろのドアから逃げようとしていたやつに一発。一番座席に座っている男の子と目が合う。君はだれだっけ。
 次は高校のときかなと考えたとこで呼び鈴が鳴る。彼女が遊びに来てくれたのかなと心が踊り扉を開ける。
血まみれの彼女が立っていた。鮮やかに笑っている。僕は何があったのか問いかけるが、彼女の開いた口からは何も聞こえない。唇は言葉をなぞっているがこちらには言葉が届かない。もう一度問いかけたが何も返ってこない。近づき耳を寄せたが何も聞こえない。
 彼女は不意に顔を逸らし口づけをした。鮮やかな血の味だ。
 口腔内に夏のオトが響いた。あれはいつだっけ。
 耳に冬の花が囁く声が聞こえた。あれはいつだっけ。
 目に写ったのは鮮やかに赤く染まり咲いた桜草。彼女はこれが好きだったっけな。この赤は血だ。
 冷たい月が僕らを見下ろしていた。あれは凍えるような寒さの日。手を繋いで歩いていた時の事だった。
 味気ないガムを噛みながら、寒いくせに気取って笑っていた。あれはいつのことだっけ。
手を離した。気取った笑顔から悲しい笑みへと変わっていく。僕は悲しげに笑うその評定が好きだった。
 あれは去年、そうちょうど今頃の事だ。電柱の影に隠れていた男。冷たい月に照らされたシルエット。鮮やかに夜の闇に光るナイフ。
 一瞬のことだった。彼女の胸から飛び出すナイフ。すれ違い様に男と目があった。真っ黒い飢餓の目。飢えている目。
 鮮やかな殺人。そうあれは去年のことだ。飛び出す血。まるで泣くことをやめない赤子の涙のように溢れ出す血。真っ赤に染まったコート、手。
 じゃあ昨日のあれは誰だったんだろうか。今年夏のオトを一緒に聞いたのは誰だったんだろうか。凍える冬に身を委ねていたのは誰だったんだろうか。あの赤く咲いた桜草は誰のだったんだろうか。
 アパートの目の前を通るトラックのけたたましいクラクションの音で目が覚めた。一体何時だろうか。男は洗面所に向かい鏡を見た。あの飢餓の目。飢えている目。鮮やかに殺した。
| 砂糖 翠 | 日記 | 17:25 | comments(0) | - | - | - |
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